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「リリアン」

 1924年、美しい娘リリアンが、ロシアからアメリカへやってくる。
ポグロム(ユダヤ人迫害)で両親と夫を惨殺され、一人娘も失って、
単身、新天地へと渡ったのだ。
ニューヨークの従姉の部屋に転がり込んだリリアンは、お針子として自活するが、
ほどなく劇場主父子双方の愛人となり、新世界の階段を駆けのぼってゆく。
父ほどの年配の男たちとのあいだに育まれる愛情と友情。だがそこへ、
死んだはずの娘が生きているという話がもたらされるや、
彼女はすべてをなげうってシベリアをめざす。


いやー濃厚な長編でした。
リリアンは生きるためにしたたかで、けれど純粋です。
ニューヨークで金持ちの親子に気に入られ、父と息子両方の愛人をやってのけるという芸当に出ながら、生き別れた三歳の娘がシベリアにいる(かもしれない)、というあてにならない情報を掴むやいなや、あっという間にすべてを捨てて身一つでシベリアに向かう。

愛人の座におさまり、一応は安定した暮らしと将来を約束されたのに、
遠く離れたシベリアにいるらしい幼い娘を心配し、命の危険をおかしてまで
追いかけていこうとするリリアンをなだめようとして、
いちばんの友人である年配の男が、尋ねます
「ソフィー(娘)がきみのものだから、だからそんなに心配しているのか」と。
それに対するリリアンの答えが印象的でした。
「ちがうわ。あの子はわたしのものじゃない。わたしがあの子のものなの」

そうなんですよね。その気持ちなんだかすごくよくわかりました。


出会う人々とつかの間の友情、または愛情のようなものを育みながら、
北へ北へと向かうリリアン。
彼女の旅はどうなるのか、最後までその行く末は目が離せませんでした。
彼女の道中で出会う人々の、その後の人生も描かれているのが良かったです。

人生は、本当に長い長い旅のようです。
私も今はその道の途中で、終点に到着したときに、初めて自分の旅を振り返ることになるのでしょう。おそらく何年だか何十年だか先に。

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