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「わたしを離さないで」

カズオ イシグロ
早川書房
¥ 1,890
(2006-04-22)

昨日の夜は眠れなかったよ〜。
本読んで眠れないなんて久しぶりなんだけれども。
衝撃でした。こんな面白い本があったのか。

■ ■ ■

これは一人の女性の回想記の形をとった小説である。

優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。
彼女が介護するのは、彼女自身が生まれ育った施設、
ヘールシャムの仲間たちも含まれる。
彼女のかつての親友だった、ルースとトミーも彼女が世話をした。

物心ついた頃から、外部の社会から閉鎖された施設で共に育ち、
共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミー、そしてキャシー。
読み進むうちに、彼らが置かれる境遇に、ある大きな恐ろしい秘密があることに気付く。
図画工作や創作に極端に力をいれた授業、保護官と呼ばれる指導者たちの不自然な態度。
奇妙だが、それでも美しい彩りの低学年時代を経て、
そして高学年になった彼らは少しずつ自分たちの置かれた運命を知り、
その全貌が明かされぬまま、へールシャムを卒業し、社会に出ることになる―・・・。


タイトルの「わたしを離さないで(Never Let Me Go)」は
キャシーが少女時代にとても大事にしていたカセットテープの中の1曲だ。
このタイトルにこめられた深い意味を知ったとき、私は胸がいっぱいになってしまった。

キャシーは、大切なこのカセットを一度失くしてしまうのだが、
数年後思いもよらぬ場所で再び彼女の手の中に戻ってくる。
その場面が、私はこの小説の中でいちばん好きだ。

「あれから数年後、トミーと二人、ノーフォークの海岸
沿いの町を歩いていて、なくしたものと同じテープを見つけた
とき、わたしたちはそれを単なる偶然とは考えませんでした。
心の奥底に感動がありました。かつて心にあった願いが、
再び信じられるものになったという感動が・・・。」



きっと、読む人によってさまざまな受け止め方があるだろう。
しかし私には、過酷な運命を背負った彼らにあるのは、絶望でも、
憤りでもないように思えてしかたない。
私は、たとえ限られた時間であっても、生きることをあきらめられない悲しさと、
それでも真摯に生に向かっていく強さと、そして、決して消えない希望を彼らに感じた。


とにかく、ものすごい良い小説だった。
ほんとに面白いので、ぜひぜひ読んでみてください!

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