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小説と音楽と日々

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音楽と青春

私は自分の青春を、音楽と切り離して考えられない。

音楽の授業はずっと好きだった。
私の通っていた小中学校は、小さな公立校ながら、今となって考えればすごく音楽の授業に力を入れてくれていた。合唱コンクールはクラス全員の目の色が変わる重要なイベントだったし、中学の卒業式には、その年の卒業生全員で作詞作曲したオリジナルの「卒業の歌」を歌う。ミュージカルや音楽の映画、たとえば『サウンドオブミュージック』や『アマデウス』、すべて音楽の授業中に見せてもらった。

『第二音楽室』は、サブタイトルの「school and music」の通り、学校生活と音楽をモチーフにした短編4編が入っている。合唱のテストを気になる男の子とペアを組んで受ける「デュエット」、不登校になった少女が女性シンガーの曲に救われて、高校で自分もバンドを始める「裸樹」。甘酸っぱかったり、ひりひりしたり、10代の音楽にまつわる思い出が詰まったようなまぶしい一冊だ。

そして高校時代、スピッツというバンドに魂を奪われた私は、そのあとロックバンドに対して憧れを抱くようになった。さらに自分でもバンドをしたいと心底思うようになったのは、スーパーカーというデビューしたばかりの同世代のバンドを深夜のテレビで見たことが決定的だった。

『ミュージック・ブレス・ユー!!』は、「音楽について考えることは、将来について考えるよりずっと大事」と言いきる、パンクロックとともに日常を生きる女子高生アザミの卒業までの日々を描いた長編小説。
私が津村記久子を好きになったきっかけとなった一冊で、さえない女子がいかにロックに救われるか、まるで自分のことかのように共感した。
主人公は自分でもバンドやってるけれど(背がすごく高くて、ベースなのがいい)、バンドの仲間との友情それってキセキ!みたいな話では全然なく、むしろバンド関係では手ひどい仕打ちを受けたりするが、もっと根本のところで音楽が彼女を救う。これぞマイノリティーのための青春小説だと思う。こんな小説書ける作家はそういないんじゃないかな。

そして最後に、短編集『ゴランノスポン』収録の表題作『ゴランノスポン』を。
大人になったバンドマン及びそんな感じの人たちが出てくる短編で、短いながら心をえぐられる。
町田康は自分もバンドマンの作家なので、大人になっても青春を引きずっているバンドマンの漠然とした不安や、「見ないふり」をしている人々の描写が上手すぎて、そのリアルさに読んでいて死にそうな気持ちになる。

以上、音楽と青春にまつわる3冊をあげてみた。
ブラスバンドはまあまああるけれど、ロックバンドが主軸になった小説というのは日本にも海外にも意外とないのだな、とこのたび気づいた。映画だとたくさんあるのだけれどね。
 
津村 記久子
角川グループパブリッシング
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(2008-07-01)

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大人が絵本に涙するとき

子どもといっしょに絵本を読むようになり、あらためて絵本は子どもだけでなく、大人にとっても何かを与えてくれるものなのだなあと感じるようになりました。
ときどき、ものすごく心を動かされる絵本に出会います。
子どもに大人が読み聞かせてやりながら、いいなあ、すてきだなあと感動できるというのは、大事なことだと思うのです。
そういうわけで、大人になった私が心を洗われた絵本を選んでみました。

◇「ちょっとだけ」瀧村有子・鈴木永子
なっちゃんの家に赤ちゃんが来て、なっちゃんはお姉さんになりました。
下の子が生まれてママは大忙し。なっちゃんは今まではママにやってもらっていたことを自分でがんばります。初めてのことばかりでなかなかうまくいかないけれど「ちょっとだけ」できるようになっていきます。
お姉ちゃんになったなっちゃんのいじらしさ、そしてお母さんのあたたかさに涙涙…。最初読んだのは勤めていた図書館の選書作業の際で、スタッフみんなでまわし読みして泣いた衝撃の絵本でした。出版されたときはまったく有名じゃなかったと思いますが、瞬く間に傑作絵本として店頭に並んでいるのを見かけるようになりました。

◇「まいごのどんぐり」松成真理子
あまり知られていないですが、とてもいい絵本です。
主人公はどんぐり。コウくんのお誕生日にケーキの上に飾られていたので「ケーキ」という名前のどんぐりです。
コウくんが大好きで、どこに行くにもいっしょです。ところがある日遊んでいたコウくんのかばんから落っこちてしまって…。
長い時間がたった後で、コウくんとケーキの再会がとてもぐっときます。
時間とか、記憶とか、人の大切なもの、もしくは大切にしたいものが短い物語に詰まっていて、自分の深い部分をゆさぶられた絵本でした。大人になった男の子にぜひ読んでほしいです。

◇「どんなかんじかなあ」中山千夏・和田誠
「ともだちのまりちゃんはめがみえない。それでかんがえてたんだ。それってどんなかんじかなあって」
​障害を扱った話ではありますが、教訓めいていたりお涙頂戴だったりする話ではないです。もう少しさらっとしているというか、そういうことじゃなくて、想像力のことを書いた絵本だと思います。
私はこの絵本、原画展で初見して、その場で呆然となってしまいました。
オチがあるというか、最後でびっくりさせられて、それからいろいろ考えさせられます。
和田さんの絵もいいです。普通だけど深みがあって、背筋が伸びるような気持ちがします。

◇ ◇ ◇ ◇ 

真夏のピークが去った…とラジオから志村君の歌が聞こえる季節になり、8月も今日で終りです。初夏から子どもの体調が思わしくなかったので、あまりどこにも出かけられなかったけれど、心の中ではいろんなことがあった、いい夏だったと思います。

すばらしい9月を。


 
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連作短編のおすすめ3冊

ひなこさんからご依頼をいただきました。

「連作短編集が好きで、最終話で、今まで張り巡らされていた伏線がすうっと回収されていく話を読みたいと思っています。日本でも海外でも、どんなジャンルでもかまいません。」

★ ★ ★ ★ ★

とても面白そうな、考え甲斐のあるお題をありがとうございました。しかし、私は小説の中でもあまり広いジャンルを読むほうではないので、「伏線回収」というのを大いに考え込んでしまいました(笑)
もしかしたらひなこさんのご要望に、正確にはあてはまってないセレクトになってしまったかもしれませんが、私が今まで読んだ中で印象深い3冊を選んでみました。

 悒僖譟璽鼻抖氾捗ぐ
吉田修一の小説で、個人的にいちばん衝撃的だった一冊です。
登場人物は大学生〜20代の普通の若者たち。マンションでルームシェアをしています。彼らが語り手を変えながら話が進んでいく形式で、最初はよくある今どきの若者の青春群像劇かと思って読んでいましたが、読後は突き落とされたような気持ちになりました。
普通の人たちの普通の日常の中に存在する「違和感」をそっと掬い取ったような、静かだけれど凄みのある小説です。

◆慂擁、あるいはライスには塩を』江國香織
正確には連作短編とは言えないかもしれませんが、とても面白かったので紹介させていただきます。
裕福で、錚々たる一族の系譜、家族の歴史が、語り手を変えながら綴られます。
時代、場所、語り手をかえて重層的に綴られる、一見、「幸福な家族」の物語。しかし、隠れていた過去が、語り手の視点を通して多様な形で垣間見えていくのがスリリングで、そして豊かだった一族の行く末は、どこか物悲しくもあります。
物語の世界観、複層的な視点、そして1960年代から2000年代までの、この国の社会文化の移り変わり…といろんな面で魅了される一冊です。後半、祖母の語りにびっくりしました。家族小説としても、とてもおすすめの一冊です。

『ヘーマとカウシク』ジュンパ・ラヒリ(『見知らぬ場所』収録)
短編集『見知らぬ場所』の後半に「第二部」として収録されている連作短編です。
まだティーンエイジャーだった二人の邂逅を回想するヘーマの語りの章、大学生になったカウシク視点の章、そして大人になって再会する二人を三人称で俯瞰的に書いた章の3章から成る連作です。
二人はアメリカに住むインド一家という、両親同士のつながりで出会います。1ヶ月ほどヘーマの家にカウシク一家が居候した冬、その後は両家はほとんど音信不通になり、二人はそれぞれの人生を進みます。二人が遠い外国の地で偶然再会するのは20年以上後のことです。
人間の「運命」というものを描いた小説だと思います。迷った末の選択が、二人それぞれの運命を決めます。最後まで読んで初めて、最初の章でヘーマが誰に向かって、なぜ回想を語っているかのというのがわかり、ああ…と言葉を失いました。

ちなみに『見知らぬ場所』は前半の短編もどれも面白いです。『天国/地獄』が一番好きです。

★ ★ ★ ★ ★

以上3冊紹介させていただきました。
少しでも興味がひかれる作品があれば、とても嬉しいです。
しかし、「短編連作で伏線回収のうまい話」というのは、私もとても読んでみたいです。もし何かおすすめがあればぜひ教えてください。
 
吉田 修一
幻冬舎
¥ 1,728
(2002-01)

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出産祝いの絵本

ワンテーマで本紹介、ご依頼をいただきました。ありがとうございます。

「お友達の出産祝いの絵本です。

出来れば他の人とかぶらないように、定番中の定番は
外したいなーと思っています。
ベビー椅子といっしょに贈る予定です。
赤ちゃんは男の子か女の子かまだ未定です。」


★ ★ ★ ★ ★

赤ちゃんが初めて読む絵本、いいですね。これからどんな世界に出会うのか、未来のいっぱいつまった絵本を選んであげたいものです。

しかし、私の統計では、赤ちゃんは絵本について、
「これはかじるもの」と思っている子が8割、
「えほんはたべられないよ」と、ちゃんとわかっているおりこうさんは10人に2人もいればいいほうです。
よって、赤ちゃんの絵本選びは、「かじっても比較的安全」という点は大事だと思います。
福音館の「0・1・2えほん」はその点がよく考えて作られています。本の角は丸くなっていて、赤ちゃんでもめくりやすいように、ページは厚いボール紙で、手を切ったりする心配もありません。作りもしっかりしていて、かじりがいもありそうです。
このシリーズは内容もどれもいいのですが、その中から2冊紹介します。

『ありのあちち』、あまり知られていないですが、名作です。わかりやすくて非常におもしろい。台所で次々つまみ食いするありさんは、赤ちゃんのやりたいことそのままで、最後はちょっぴり危ない目にあいますが、裏表紙でちゃんとオチもついていて、かわいい。
『かんかんかん』、遮断機の音がして、次々といろんな電車がやってきます。編みぐるみや帽子、靴下などで作られた電車が目の前を通り過ぎていくようなわくわく感があります。真っ黒な絵本でちょっとシュールな感じもするのですが、そこが子どもの目を引くんでしょうね。私の息子が偏愛していた一冊です。男の子向けかなと思っていましたが、友達の女の子にもかなりうけがよかったらしいです。
「0・1・2シリーズ」からは『ぱんだいすき』もおすすめ。ぱんがものすごくおいしそうで、わくわくするので、誰にも(おかあさんとおとうさんにも)愛される一冊です。

最後の1冊は『おやすみなさいコッコさん』
子どもの寝かしつけに読んでいました。とても静かな絵本で、子どもと過ごした一日の終わりに読むと、読み手の親が非常に心洗われる絵本であると思います。そしてとても眠くなる絵本です(親子ともに)

★ ★ ★ ★ ★
 
こんな感じで選んでみましたが、参考になると嬉しいです。
お友達にかわいい赤ちゃんが生まれますように。


 
のむら さやか,川本 幸
福音館書店
¥ 756
(2010-06-10)

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ワンテーマで本紹介

某新聞で「本のソムリエ」というコーナーがあります。あるひとつの読者からの相談に対して、回答者がそのテーマに沿った何冊かの本を紹介するコーナーです。私は自分でもずっとこの本のソムリエみたいなことがやってみたいなあと思っていました。
なので、自分でブログでやってみようと思います。残念ながら今のところ相談者はいないので、自分で勝手にテーマを決めて、紹介していこうと思います。

個人的に相談してみたいのは『映画のソムリエ』です。映画あんまりくわしくないので、「暗い青春映画」とか「サントラの良さで内容2割増しの映画」とか、こういう映画ないかしら?と聞いてみたい。映画借りに行ってみたものの、よくわからなくなって何にも借りずに帰ることが結構あるので、趣味があうソムリエがいるとありがたいのに、といつも思います。

人からすすめられた作品は、音楽でも本でも、後ろにそれを紹介してくれた人が透けて見えるのがいいと思います。それらを聞いたり読んだりするたびに、すすめてくれた人のことを思い出すのも。
結局文化というものは、孤独な心を救うものであると同時に、他人と分かちあうことに至上の喜びがあると思っています。

まあそういうわけで、7年も細々とブログで書評書いてきたので、集大成ということも含め、ちょっと試しにやってみようかなと思います。
読む本に迷ったときの参考にしていただけると幸いです。
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